ロマノフ王朝に深く取り入ったという怪僧ラスプーチン。その興味深い風貌と不気味な逸話から、数々の小説や映画、アニメなどにも使われてきました。今日は『神の如き男』といわれ、ニコライ2世とアレクサンドラ皇后にとりいったラスプーチンについての逸話をご紹介します。
- ニコライ皇帝夫妻の不安につけいり、政治に介入
- 陰気臭い祈祷師に、廷臣と国民から不満の声があがる
- 皇帝の親戚にあたるユスポフ公を中心とする貴族たちにより暗殺された
ラスプーチンとは
ラスプーチンは、1916年に暗殺されて以来『ロマノフ王朝を滅亡へと導いた男』として描かれてきました。1869年1月9日、シベリアの寒村に生まれ、裕福とは程遠い生活の中育ったラスプーチンは、自らを聖者であると宣言し、その不思議な力をもってロマノフ家に取り入ります。
というのも、ニコライ2世と皇后アレクサンドラは大きな悩みを抱えていたのです。2人の間にうまれたアレクセイは、唯一の後継者候補であり断絶間近のロマノフ王朝にとっての希望でした。しかし皇太子は、深刻な血友病をわずらっていました。
皇太子の病
アレクセイの血友病は母方の遺伝子に由来しているもので、医師は手が付けられず、唯一皇太子の痛みをやわらげたのがラスプーチンの祈祷でした。藁にもすがる想いだった皇后。
いつしか皇后アレクサンドラだけでなく、皇帝ニコライ2世までもがラスプーチンを心の支えとし、次第に彼に政治的な助言をも求めていくようになりました。
不満の声
しかし、ラスプーチンの存在に疑問を投げかける声も多々ありました。第一次世界大戦中、ニコライ2世が自ら軍隊を監督するためにサンクトペテルブルクを離れる際、ラスプーチンは皇后とともにアレクセイのそばにとどまりました。「皇帝夫妻は、あの男に操られているんじゃないか」、ツァーリがいないのにのさばるラスプーチンに廷臣からも、国民からも不満の声があがったのです。
1914年には、農民の女性がラスプーチンの殺害を試み、ラスプーチンは胃を刺され彼は重傷を負いましたが、そこで死ぬことはありませんでした。
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ラスプーチンの暗殺計画
皇帝があの男を追放しないなら、我々でやるしかない
皇帝の親戚にあたるユスポフ公を中心とする貴族たちは、ラスプーチンの暗殺を決めました。決行は1916年12月30日、ユスポフ公は真夜中過ぎにラスプーチンを自宅に招いて地下室に案内しました。そこでラスプーチンに青酸カリを混ぜたケーキとワインが出しますが、猛毒も効かず彼は平気で食べ続けたといいます。
(参考:【ロマノフ王朝とラスプーチン】コナンと追う恐怖のロシア史 )
死因は頭部狙撃?
青酸カリが効かないことに気づいたユスポフ公はラスプーチンの胸を撃ちました。殺人計画を隠蔽するために少し離れて戻ったや先….. さすがに死んでいるだろうと思いきや、血だらけのラスプーチンがユスポフ公を襲いました。
追いかけてくるラスプーチンを振り切り、ユスポフ公は何とか逃げ出しました。この陰謀に加わっていた貴族が、再びラスプーチンを銃で打ちユスポフ公を救いました。あまりのしぶとさに再び起き上がるのを恐れて、彼らはラスプーチンの遺体を包み近くの凍った川に投げ捨てました。
さすがに、川から引き上げられたラスプーチンは息をしていなかったそうです。ちなみに『死因は溺死である』といった説もあり、川に投げいれられた時点で彼はまだ生きていた可能性もあるといわれています。
遺体の行方
遺体は後にアレクサンドラ皇后の声により回収され埋葬されたのですが、2月革命後に再び掘り出されました。祈祷師・神秘主義者のラスプーチンは曰く付きでしたので、念のためにと遺体は燃やされることになったのです。そして遺体が燃やされた時、ラスプーチンは炎の中で起き上がったそうです。やはりまだ生きていたのかと人々は恐れ慄きました。
ただこれは腱が切られずに加熱すると縮んでしまう自然な現象で、川から引き上げられた彼は明らかに遺体となっていたそうです。
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まとめ
ニコライ皇帝夫妻の不安につけいり、じわじわと政治に介入していったグリゴリー・ラスプーチン。陰気臭い祈祷師に、廷臣と国民から不満の声があがり、最終的には、皇帝の親戚にあたるユスポフ公を中心とする貴族たちにより暗殺されることとなったのでした。
人間離れした逸話と、不思議な魅力からラスプーチンは映画やアニメにも登場しています。日本では『名探偵コナン 映画世紀末の魔術師』や、ゲーム『Fate/Grand Order』に登場するあるサーヴァントの暫定の真名としてキャラクター化されました。
ロマノフ王朝との奇妙な関係、その風貌とおどろおどろしい逸話の数々から、人々のラスプーチンへの興味は尽きることがありません。彼とロマノフ王朝の関係についてはこちらの記事 (【ロマノフ王朝とラスプーチン】コナンと追う恐怖のロシア史) に別途まとめておりますので、怪僧ラスプーチンは何者だったのか気になる方はご覧になってみてください。
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