光と影を魔術師 レンブラント、バロック期を代表する画家のひとりです。しかしその名声と、美しい絵画は、彼の波乱万丈な人生の上に成り立っていました。この記事では、巨匠レンブラントの波乱万丈な人生と、光と陰に隠された裏話をご紹介したいとおもいます。
巨匠 レンブラントの波乱万丈な人生
若き画家とて、成功をおさめる
( (レンブラントの自画像 1640年)
オランダの片田舎で粉屋の息子として生まれたレンブラント。若くして画家として成功した彼の人気はすさまじく、肖像画と歴史がの注文が殺到するほどでした。さらに彼の人生はトントン拍子ですすみ、上流階級の娘サスキアと結婚。
- 弟子が多くあつまったので莫大な授業料がはいり、
- さらに上流階級の娘と結婚して、
- 花嫁の莫大な持参金と、上層の顧客を手に入れる
と、まさに若くして地位も名誉も、手にすることができたのです。
大邸宅を購入し、豪快な暮らしを送る
(『居酒屋の放蕩息子』サスキアとの自画像といわれる 1635年)
成功者になると、それにふさわしい邸宅が欲しくなるものなのでしょうか。レンブラントは手にしたお金で大邸宅を購入し、絵画や版画など世界中の珍品を収集買いあさるようになりました。「なんでもかんでもほしい」インスピレーションを求めていたのか、世界のすべてを自分のものにしたかったのか。
豪華な邸宅の2階はまたたくまに骨董品や、武器でいっぱいになりました。そんな彼の姿をみた妻サスキアの親戚には「花嫁の持参金を食いつぶす気か」といわれていたとか…
全盛期からの転落
全盛期のレンブラントが描いた、成功者の自画像
(レンブラントの自画像 1640年)
そんな全盛期にレンブラントが描いた絵画がこちら「成功者の自画像」です。
手すりに右手をやすめ、上半身を斜めに向けてこちらを威厳のある姿で見つめる男性。髪は丁寧にブラッシングされ、ヒゲも剃ってこざっぱりした顔。黒いベレー帽をかぶり、刺繍と毛皮のある洗練された洋服を堂々と着こなす。そこにあるのはたしかに「成功した男の自信に満ちた顔」でした。
愛する妻サスキアの死と、絶頂期からの転落
(フローラとしてのサスキア 1635年 ロンドン・ナショナルギャラリー所蔵)
たくさんの花が飾られた冠をかぶった、まるで女神のようなサスキア。レンブラントが愛したサスキアはいつの間にか、歴史画の主要人物になっていました。そんなレンブラントの人生は、「最愛の妻 サスキアの死」をきっかけに思わぬ方向へむかっていきます。でした。彼女が亡くなるとレンブラントは、
- 乳母として雇っていた女性と不倫トラブルをおこし
- あらたにやってきた家政婦と結婚しようとするが、また一悶着
プロテスタントの考えが根強いオランダでまさかの女性 (不倫) スキャンダル。富も名声もすべてを手にしていたはずなのに。レンブラントは、相手の女性とともに宗教裁判にかけられたのでした。
巨匠の晩年
レンブラント、無念の自己破産
(事実上の後妻となったヘンドリッキェ 画:レンブラント1655年)
女性問題によりレンブラントの信用はだださがり… 。そんな中オランダは戦争でイギリスに負け、まるでリンクするかのように、絵画の注文はぱったりと途絶え、レンブラントはやむなく自己破産に陥ります。そこで豪邸も手に入れたコレクションも、愛したサスキアのお墓でさえも手放すことになったのでした。
富も名声も失ったレンブラントでしたが、それでも神に見放されることはなく、乳母のヘンドリッキェとのとの同居婚が認められ、愛する人と静かに暮らすことができました。
最後まで続いたレンブラントのこだわり
そんななか再起をかけて、レンブラントは大作『クラウディウス・キウィリスの謀議』を描きあげます。自分のこだわりをとことん詰め込んだ傑作でしたが、注文主は気に入らないとして絵はレンブラントの元へ返品されてしまいました。ここでも苦汁を飲んだレンブラント。
それでも生涯を通して彼は「自画像」を描きつづけました。最愛の妻が亡くなった時も、愛しい息子が亡くなった時も、お金も友人も全てを失った時も。自画像からすべてを学んで糧としてきたレンブラント、それが彼の画家人生を支える柱となっていたのでしょう。
あとがきにかえて
(大人になったティトゥス(享年26歳)画:レンブラント )
そんな苦い思いをした冬のこと、自己破産に追い込まれても一緒にいてくれた、愛するヘンドリッキェが結核で亡くなります。その2月に息子ティトウスは結婚し、ささやかな結婚式をあげ、束の間の幸せを享受したのですが…。 義理娘マグダレーナが妊娠して3ヶ月、まさかの愛息子もこの世を去ってしまったのでした。
若くして成功し、何もかも手に入れたかと思えた光の影の巨匠。人生というのは、どうなるか、本当にわからないものです。酸いも甘いも知り尽くした彼の影がこめられているからこそ、彼の絵では光がいっそう引き立つのかもしれません。またレンブラントはいくつもの自画像を残しており、その謎についてはこちらの記事 (【巨匠レンブラント】はなぜ、あんなに多くの自画像を描いたのか) にまとめております。
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