エベレスト山には200人以上の遺体が残されていると考えられていますが、あまりに過酷な状況であるため、どのくらいの遺体が正確にはどこにあるのか、誰も完全には把握できていません。
しかし、エベレストで亡くなった人の遺体は、2/3がまだそこにあるといわれています。この記事では、なぜ遺体を地上に下ろすことができないのか、残酷な実情を追っていきたいとおもいます。
残酷な現実
エベレスト山は、世界で最も高い山の一つであり、登山家たちにとって最大の挑戦のひとつとなっています。しかし、その挑戦には”多大なリスク”が伴います。過酷な気象条件や高度病など、多くの困難があるため、山頂に登頂することは、常に危険な試みであるといえるでしょう。
そのため、登山家たちが遭遇する不慮の事故や病気によって、エベレスト山には多くの遺体が残されています。2021年1月の時点で、エベレストでは305人の死亡が確認されています。しかし先ほども述べたとおり、その大半はまだエベレストに残されています。そして遺体の中には、発見されていないものもあれば、ルート上の「目印」 となっているものもあり、まだ発見されていないであろう遺体もあるといわれています。
遺体の回収が難しい理由
エベレスト山で遭難した登山家の遺体は数々発見されていますが、この遺体の存在は、エベレスト山がいかに危険で過酷な場所であるかを示しています。遺体の多くは、永久凍土によって保存されており、時が経つにつれて遺体の発見率は低下していきます。
なぜ遺体は撤去されないのか、それは遺体の回収があまりにも難しいからです。
多くのサポートと最高の装備を備えた最も経験豊かな登山家でさえ、無事に登頂できることすら保障されていません。遺体を持ち帰るには、かなりの条件を満たしたチームの協力が必要で、費用は450万〜900万円ほどかかるとされています。
遺体を回収することは非常に困難であり、しばしばリスクが伴います。エベレストの高地は、酸素濃度が低く、気温が極端に低いため、救助隊が遭難者の遺体を回収することは、自身も危険にさらされることになります。遭難した場所によっては物理的に回収できないこともありますし、雪と氷に覆われており、そもそも引き出せない可能性もあります。また一部の遺体は、端や岩壁、雪の土手などに吹き飛ばされ、見たことも歩いたこともない場所にあることも考えられます。
スポンサーリンク
残された遺体
エベレストにおいてよく知られているものとしては、 「グリーンブーツ」 と呼ばれた遺体です。この遺体は以前は身元不明だったが、現在はツェワン・パルジョルのものと判明しています。彼はインドの登山家で、1996年にチームを組んで登頂を試みた人物でした。
パルジョルの遺体は、2014年頃に他の遺体と一緒に移動させられました。中国側の登山者が移動を試みて、岩の下や見えないところに埋められたと伝えられています。遺体を回収することは、登山家たちの間でも議論の的となっています。遺体を回収することが、遭難者の家族にとっても精神的な苦しみの終焉となることは間違いありません。しかし、同時に、エベレスト山が多くの遭難者を受け入れてしまう根本的な問題にも目を向ける必要があるのでした。
1996年の大量遭難事故の爪痕
(ロブ・ホールの遺体)
1996年のエベレスト大量遭難事故は、2014年に雪崩のため16人が死亡する事故が発生するまでは、エベレスト登山史上最悪の遭難事故とされていました。同事故で犠牲となった、ロブ・ホールとスコット・フィッシャーの遺体も山に残されています。映画エベレストでも取り上げられていた通り、ロブ・ホールは、商業化していた「アドベンチャーコンサルタンツ隊」のガイドでした。
1996年ではこういった商業化した登山からによって、エベレストはとても混雑していたのです。猛吹雪がはじまり、ひどい気象状況の中、多くの者たちが命を落としました。ロブ・ホールは8,690メートル前後で亡くなっており、遺体はいまも山の上に存在しています。スコット・フィッシャーの遺体は、ガイドのアナトリが敬意をはらってメインルートから違うところへと移動させましたが、地上に下ろすことは叶いませんでした。
(スコット・フィッシャーの遺体)
スポンサーリンク
まとめ
今も多くの死者を抱えて、そびえたつエベレスト。
身体が腐敗することはないのですが、その過酷な気候条件故、五体満足でいられるというわけでもなく、降ろすこともできないのです。しかし、エベレストから遺体を回収しようと試みがなされたのも確かで、時には親戚やガイド会社、政府が資金を提供することもありました。
しかしやはり難易度が異常に高いことから、遺体を地上へと戻すのではなく、遺体を人目につかないところへと移動させるか、山腹に押しやるのが一般的となっています。登山者の中には、「自分が死んだら遺体はエベレストに遺して欲しい」という者もいました。遺体の回収はこういった理由から阻まれることが多く、いまも山には多くの遺体が残されているのでした。
関連記事
スポンサーリンク