スパの町イシュルにあるハプスブルク家の離宮は、ザルツマングードで最も人気のある観光名所。カイザーヴィラは皇帝フランツ・ジョセフの夏の隠れ家で、実際に使われていた調度品が保存されており、ハプスブルグ家の私生活を垣間見ることができる貴重な場所でもあります。この記事では、皇妃エリザベートもおとずれたイシュルの別荘をご紹介します。
バート・イシュルの夏の離宮
カイザー・ヴィラは、ソフィ大公妃が用立てた、ハプスブルク家の別荘です。
オーストリア大公妃ソフィは、息子ヨーゼフとエリザベートとの婚約が決まったあと、お祝いにカイザー・ヴィラ (夏の離宮) を購入しました。バード・イシュルはフランツ・ヨーゼフと皇妃エリザベートが初めて出会った思い出の地、そしてこの新古典主義の建物をフランツはとても気に入っていました。バード・イシュルの街が気に入っていた2人は、避暑地としてまた狩猟の館として頻繁に滞在したそうです。
(別荘 カイザー・ヴィラ kaiservilla)
この別荘は、1834年に地方にある私有地としてふさわしくなるよう改築されました。具体的にはサイドウィングが追加され、庭に面する側には中央アーケードが増設されて、2つの建物が結ばれました。その結果できたEの文字はソフィ大公妃の『勇敢の象徴』とされました。皇帝が離宮に滞在している間、お付きの人たちは街のホテルに泊まったそうです。
皇帝のお気に入りが詰め込まれた館
夏の離宮では、ときに要人を迎えることもありました。別荘の内装には、皇帝が好んだ狩猟趣味が至る所に見られました。他の御所に比べると応接室などはかなり控えめで、個室も狭かったといわれていますが、皇帝の好みを反映した、居心地の良い雰囲気で包まれていました。
皇帝の部屋にはいくつかの気圧計があり、前もって組んだスケジュールを厳格に遂行できるよう天気を予測しようとしたフランツ・ヨーゼフのこだわりも見受けられます。皇帝が亡くなったあとは、末娘マリー・ヴァレリーに引き継がれ、彼女の子孫が現在のこの地を所有しています。かつてフランツ・ヨーゼフやエリザベートが所有していた一家に伝わる数多くの遺品が、ひそかに当時を物語っています。
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カイザー・ヴィラのまつわる裏話
フランツ・ヨーゼフの愛はこの離宮に注がれた、といわれるくらいこの別荘を愛していたといい、”皇帝の親しい友人”であったカタリーナは離宮には泊まらず、フランツ・ヨーゼフがヴィラフェリシタス (別荘) へ訪れていたそうです。1888年の8月、カタリーナがカイザー・ヴィラに招待されたとき、皇帝夫妻はカタリーナにこの別荘を案内して、3人で楽しいひと時を過ごしました。
娘マリーはカタリーナの存在に割り切れないものを感じていましたが.… 見た目に過度にこだわり旅行ばかりの母と比べて、 “飾り気がなく、深い思いやりを持った女性”であり、彼女との交際が父にとって良いものとなっていることは認めざるをえなかった、という裏話も残っています。
あとがきにかえて
マリー・ヴァレリーの子孫が所有しているカイザー・ヴィラですが、内部は一般公開されています。広大な敷地の中には森や小城などがあり、のんびり散策しながら歴史を感じることができます。
ウィーンとミュンヘンのほぼ中間に位置するバート・イシュル、ここは一家にとって特別な場所でした。なかなか子供ができなかったゾフィ大公妃は、宮廷の侍医からの勧めによりバート・イシュルの塩泉で治療したところ、男子が生まれるに至り。またフランツがエリザベートに出会ったのもこの地でありました。また、この第一次大戦を引き起こしたサラエヴォ事件を受けて発せられた、セルビアに対する宣戦布告が署名されたのもカイザーヴィラの執務室でした。シシィ博物館も素敵ですが、実際に皇帝らが過ごした別荘もまた、いちどは訪れてみたいものです。
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