- キャサリンとネリッサは、エリザベス女王のいとこして実在
- 知的障害を持つふたりは王室への影響を考慮し、静かに施設に収容されていた
- 隠蔽工作などはなく、戦争中という治世もあり、母親にとって苦渋の決断の末だった
ザ・クラウンのシーズン4で明らかにされた「発達障害をもつ2人のいとこ」キャサリンとネリッサ。実際に、エリザベス女王には、発達障害を持つ2人の秘密のいとこがいたのでしょうか。
この記事では、どこまでが本当なのか、イギリス王室の家系図とともに真実に迫っていきます。
隠された王室人たち
1987年、メディアは巨大なスキャンダルを暴きました。
エリザベス女王には、ネリッサとキャサリンという2人の従兄弟がおり、精神障害者のための施設にいると報じたのです。
2人は最も基本的な条件で生活しており、面会者はいなかったと言われていますが、これはイギリス君主制を守るために、事実を隠匿していたためと思われます。
姉妹は実在
(左がネリッサ、右がキャサリン Netflix/The Crown)
キャサリンとネリッサは実在の人物です。 『ザ・クラウン』 で描かれたように、エリザベス女王やマーガレット王女とはいとこ同士でした。
1919年に生まれたネリッサと、1926年生まれのキャサリンの父はジョン・バース=ライアンです。父ジョンは、エリザベス女王とマーガレット王女の母方の叔父にあたります。彼はエリザベスが王位に就くのを見届けることなくこの世を去りました。
施設への収容
キャサリンとネリッサは生まれつきの知的障害を持っていました。
最初は自宅で育てられていましたが、1941年、ロイヤル・アールズウッド病院に収容されました。姉が22歳、妹が15歳の時です。
この時点で父ジョンはすでに亡くなっていました。母フェネラは、1965年に亡くなるまで、施設を定期的に訪れていたと言われています。また、家族の他のメンバーも頻繁に訪問していたことが証言されています。
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計5人が収容
世間がこれらの暴露に動揺するのも無理はなく、同じ家系の3人の女性もまた 精神的欠陥があり、施設にいることが分かりました。
キャサリンとネリッサの他に3人、計5人が施設に収容されていたのです。王室はどうしてそんなに冷酷なのか。中には、「なぜ家族を監禁し自分たちだけ贅沢な暮らしをするのか」と批難する者もいました。
実際のところ、これを唱えるのは反王室の派閥でした。王族を廃止すべき理由のひとつとして、このスキャンダルに食いついたのです。
家系図でみる繋がり
(参考記事:【ザ・クラウン シーズン4がより楽しくなる相関図】とイギリス王室の家系図)
左下の赤枠が、施設に入っていた女性を示しています。
家系図を見ると、この遺伝的機能不全がイギリス王室の一部に現れていることがはっきりと分かります。ただ、王室が 「汚染された血」 を持っているとか、遺伝子に欠陥があるという噂は真実ではなく、それは母方の父 (エリザベス女王の祖父) に由来するものでした。
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女王らへの遺伝的影響
エリザベス女王ら姉妹には、女王や王位継承者に影響を及ぼさない遺伝病があると報告されています。キャサリンらにみられた遺伝子は、母方の祖父クリントン男爵を経たようです。系図学者ヒュー・ペセットは、
遺伝子が明らかにクリントン家のもので、王室のものではない
それはイギリス王室に受け継がれてきたものではなく、母方の祖父から受け継がれたものだ
と言葉を残しています。
ロイヤル・アールズウッド病院は、サービスが「地域社会のケア」プログラムに移行したため1997年に閉鎖され、キャサリンは生き残ったいとこのイドネア・フェインと一緒にケトゥイン・ハウスと呼ばれるNHS老人ホームに移されました。
苦悩の末の決断
フェネラの孫娘レディエリザベスは1987年に「隠蔽工作はなかった」と声明を発表しました。意図的かどうかは別として、フェネラはバークの貴族に彼女の娘たちが「死んだ」と信じさせていたようです。
悲しいことに、障害を持った人々を監禁したり収容したりしたのは王室だけではありませんでした。それは1940年代のことで、戦争中であり、母親にとっては難しい決断であったのです。
その当時は、脳の損傷や障害は良いものと思われておらず、知識不足もかさなり宗教的な意味では、それ自体が「罪」だと捉えられていたことも関係しています。
マーガレット王女の関わり
イドネアとキャサリンの精神年齢はともに6歳前後であり、両者は不可分であると言われています。しかし実際には、2002年にイドネアが亡くなる少し前に別の養護施設に送られたとき、2人は別居していました。
キャサリンが亡くなったのは2014年のことでした。
イギリスの君主世を確固たるものにするためにも、王太后らは不都合な真実を覆い隠す必要がありました。第7話ではマーガレット王女が「いとこ」の存在に勘付き確かめる役割を果たしていますが、それはドラマ内の話であり、実際には、マーガレット王女がいとこたちの発見に絡んでいたことはないようです。
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まとめ
キャサリンとネリッサはエリザベス女王のいとこして実在。知的障害を持つふたりは王室への影響を考慮し、静かに施設に収容されていました。しかしそこに隠蔽工作などはなく、戦争中という治世も重なり、苦渋の決断の末だったようです。
そして『ザ・クラウン』で語られた物語とは反対に、王太后は1982年まで、彼女の姪であるメリッサやキャサリンたちに何が起こったのか気付いていなかったようです。
実母フィネラの対処もあってか、それまでは彼女も「姪たちは死んだ」と思っており、事実を知ってから王太后はキャサリンらに誕生日やクリスマスにお菓子やおもちゃを買うためのお金を送ったそうです。
ザ・クラウンで遺伝病なのではないか、自分に影響があるのではないかとマーガレットの心配が示唆されていましたが、実際のところ、狂気の曽祖父ジョージ3世のほうが気になっていたともいわれています。
中世に狭い範囲で繰り返された婚姻の歴史。スペインだけでなく、イギリスの貴族にも近親交配の影響が出ており、それが最近まで秘されていたという事実。今も世の中に知られずひっそり進んでいる不都合な出来事が沢山あるのかもしれません。
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