新型コロナウイルスで外出禁止が続くイギリス、休業を余儀なくされたロンドンナショナルギャラリーのスタッフが「自宅で名画を再現」し、SNSで話題になりました。
キッチンタオルの帽子など身近なもので小物を代用したり、ペットが加わったりウナギの代わりにエビを持ったり、想像力は尽きることなく、スタッフの作品愛が伝わってくる見事なオマージュがtwitterにアップされています。そこでこの記事では、見事に再現された8の名画をご紹介します。
自宅で名画を再現 BEST8
① キッチンで再現する『エマオの晩餐』
学芸員のひとりはカラヴァッジョの「エマオの晩餐 (The Supper at Emmaus)」を選びました。陰影を表現するため、キッチンにて巧みに照明を利用しています。絵画の主題は、復活の日に二人の弟子がエマオに向かう道中に主(イエス)と出会い、気付かぬまま夕食を共にするも、食卓でパンを分け祝福する姿から彼がイエスであることに気付く場面。構図と陰影が見事に再現されています。
② 手元にはリスの置物『リスとスターリングの女性』
肩にムクドリを乗せてリスを抱く物憂げな女性… いや、よくみるとこれは男性、彼は美術館の学芸員だそうです。キッチンタオルの帽子、肩にはゴム製のアヒル、そして手元にはリスの置物。身近にあるものを用い、ドイツのルネサンスの画家ハンス・ホルバインによる『リスとスターリングの女性』を見事に再現しています。作品を引き立たせる青い背景の再現度合いも圧巻ですね。
③ 最高に美しい『赤いターバンの男』
この有名な作品は「男の肖像」として知られていますが、通常は「赤いターバンの男」と呼ばれています。(本人の自画像ともいわれている) このオランダのルネッサンスにおいて有名な先駆者の一人であるヤン・ファン・エイクの作品を、美しい女性が再現しています。見所は、赤いターバンの再現具合… 毛皮をまとったスタッフの神々しいこと…現在と過去の見事な融合です。
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④ 貫禄あふれる貴婦人『アレクサンドリアの聖カタリナ』
アルテミシアはイタリアのバロック様式の画家であり、17世紀の最も優れた芸術家のひとり。女性が活躍するのが珍しい時代に活躍した、プロの女性画家でもありました。そんな彼女の絵を再現したのがこちらです。現代の身近なもので作ったとはとても思えない仕上がり… 貫禄あふれる貴婦人からは、芸術をとことん愛する心がつたわってきます。
⑤ 自前の髪の毛を生かした『若い男の肖像』
マルコバサイティは、主にヴェネツィアで働いたルネサンスの画家。彼の作品は主に肖像画であり、しばしば宗教的なテーマにも焦点をあててきました。強い幾何学的形状と照明のシャープなコントラストを特徴とする、バサイティの絵画。とてもシンプルな絵画ですが、黒いベレー帽と自身の長い髪を活かして、特徴をおさえた再現が魅力的です。
⑥ 可愛すぎる、ヤコブ・トリップの妻
1661年、レンブラントによって描かれたマルガレッタデギアと夫のジェイコブトリップ。こちらは妻マルガレッタのオマージュです。マルガレッタデギアは、石臼のラフと尖った頭飾りを付けた、昔ながらの服を着ています。絵画をオマージュした右側に映る美女は、ナショナルギャリーの職員。黒い衣装に白襟は手作りなのか、見事に絵の雰囲気を再現しています。
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⑦ やたらと明るい『農民一家の食事』
オランダ風俗画の巨匠が描く、17世紀の慎ましくも生活感あふれる家庭の食卓。ペットの犬もしっかり参加しています。また右奥にみえる少年は、絵画に見える少年とそっくり。黄色い衣装をまとうお母さんの姿も見事なものです。
⑧ ペット大活躍、猫と夫人
印象派の先駆的画家 エドゥアール・マネの描いた絵を、シンプルに表現。ペットの猫はそっくりで、まるで絵画から抜け出してきたかのよう。
正直後ろの女性は、細身でピンク色の服をきてポージングを真似ているだけなのですが、猫のおかげか、こうして並べると段々そっくりに見えてくるから不思議ですね。
あとがきにかえて
(レンブラントの自画像)
常に作品と関わり続けてきたロンドンナショナルギャラリーのスタッフですが、新型コロナの影響で美術館は休業に…。しかし自ら作品をこうして再現することで、作品がどのように構成されているか、より深く考察し、適切な小道具を見つけるために、より創造的に考えるようになりました。
またそれにより美術に興味がなかった人へも興味を惹かれるというプラスのサイクルを生み出しているそうです。StayHome、そしてEnjoyHome。身近なことで楽しみは作り出せるのかもしれません。
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