ジョン・エヴァレット・ミレーによる絵画、オフィーリア。オフィーリアはシェイクスピアの戯曲『ハムレット』の登場人物であり、キャンパスには高貴な女性が歌を口ずさみながら、川に落ちて溺れていく様子が描かれています。
その美しさや自然の風景の正確な描写で賞賛される『オフィーリア』、なぜ彼女は悲しそうな顔をしているのか。画家はどんな風にこの絵を描き上げたのか、この記事では名画『オフィーリア』の元ネタとなった戯曲ハムレットのあらすじと、絵画が描かれた背景に迫っていきます。
- 絵画オフィーリアの題材は、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」
- 主人公は、殺された父を思いながら水の底へ沈んでいく娘オフィーリア
- 描かれたのは愛する人が父を殺した事実を受け止めきれず、絶望した彼女の姿
絵画オフィーリアの題材
オフィーリアの題材は、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」です。
川に浮かぶ美しい女性こそが『オフィーリア』で、戯曲ハムレットに登場する女性でした。『ハムレット』は、デンマーク王子の悲劇としても知られています。かんたんにまとめるならば、父を殺されたハムレットが、父王を殺した伯父たちへ復讐していく物語です。
ハムレットのあらすじ
オフィーリアの世界観をもっと知るために、ハムレットのあらすじを簡単にご紹介します。
ある日、デンマーク王が急死しました。
王弟であり伯父のクローディアスがデンマーク王の座に就き、母は時が立っていないにもかかわらず伯父と結婚、ふたたび王妃の座につきました。納得がいかないハムレットでしたが、父 (元デンマーク王) の亡霊により、その死は伯父による毒殺だったことを知り、ハムレットは狂気を装い復讐を誓います。
オフィーリアの父でもあった宰相ポローニアスは「ハムレットがおかしくなったのはオフィーリアへの実らぬ恋ゆえではないか」と解釈しますが、王の命令でハムレットに探りをいれていきます。やがて、ハムレットは「王が父を暗殺した」という確かな証拠を掴みました。そんなある日、ハムレットは、母である王妃との会話を盗み聞きしていた宰相ポローニアスを、伯父 (王) と誤って刺し殺してしまったのです。
父を亡くしたオフィーリアは度重なる悲しみのあまり正気を失い狂い、歌を口ずさみながら川へ出かけ、そのまま足を滑らせ川に沈んでしまいます。宰相ポローニアスの息子レアティーズは、父と妹オフィーリアの仇をとろうと怒りを燃やしました。ハムレットの存在に危険を感じた王はレアティーズと結託し、ハムレットを剣術試合に招き、毒剣と毒入りの酒を用意して秘かに殺そうとするのですが…
試合のさなか、王妃が毒入りとは知らずに酒を飲んで亡くなってしまい、ハムレットとレアティーズ両者とも試合中に毒剣で傷を負います。死にゆくレアティーズから真相を聞かされたハムレットは、王を殺して復讐を果たしたあと「事の顛末を語り伝えてくれるよう」親友ホレイショーに言い残し生涯を終えるのでした。
オフィーリアは、テートコレクションで最も人気のあるラファエル前派の作品の1つ。ミレーは2つの場所でこの絵画を描いた、といわれています。
彼はまず初めに風景を描き、その次にオフィーリアの姿態を描いたのです。彼はイーウェル市のホグズミル川のそばで、背景の一部を描き、ロンドンのスタジオでオフィーリアの姿を描きました。ミレーと彼のラファエル前派の友人たちは屋外で絵を完成させることも多かったのですが、これは当時としては珍しいことでした。