中世ハプスブルク家に嫁いだフアナ。愛する夫が亡くなるや正気を失い、約40年という長期にわたって幽閉されたことで知られる女性です。この記事では、彼女を題材とした絵画『彷徨う狂女フアナ』に込められた物語を解説していきます。
- 『彷徨う狂女フアナ』は、画家フランシスコが29歳の時に描いた最高傑作
- フアナは実在の人物で、夫の死により正気を失い幽閉されたことで知られている
- 絵画では、彼女が夫の棺とともにスペインを練り歩く姿が描きとられている
彷徨う狂女フアナ
(彷徨う狂女フアナ)
構図の中心から強烈にシーンを支配する、若い女王。彼女はクッションで覆われた飾り気のない折りたたみ椅子の前に立ち、分厚い黒いベルベットのドレスと髪を隠す頭飾りを着て、未亡人のような格好をしています。彼女の小さくて壊れやすい左手には、未亡人を連想させる2つの結婚指輪がついています。彼女の視線は完全に狂っていて、妊娠しているのかだいぶ膨らんでいるようです。
彼女が付き添いと一緒に立ち止まった荒涼とした環境の中での極端な寒さの中で、背後にある煙のような炎は消えることなく燃え続けています。
画家によりこめられた、この絵の魅力
(彷徨う狂女フアナ 右部)
このキャンバスは、カスティーリャ女王フアナの姿を最も美しくロマンチックに描いているといわれています。フアナは女王としての威厳と心、とりわけ魅力的な一面を兼ねそなえた人物でありました。
夫が死んだのを信じられず、カスティーリャを放浪したフアナ。度々棺をあけては、「夫がほんとうに死んだのか」を確認したといいます。後ろにいるお付きの人々は疲れ果てているようです。座り込んでいる者、また怪訝な目で彼女を見る者。よく見ると、各々が様々な感情を持っているのが伝わってきます。
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背景の細かい描写
(彷徨う狂女フアナ 左部)
待っている若い女性が棺の横に座り、また膝の上には開いた祈祷書を持っています。白衣にひげを生やした顔を覆うような頭巾をかぶった僧侶が祈りを読み、小さなろうそくを持っている間、彼女は忍耐強く女王を注意深く見守っているのでしょう。
女王の右側では人々火の周りや裸の木の幹に沿って身を寄せ、この葬式の旅に同行する廷臣たちが疲れを癒そうとしている姿がみえます。彼女たちの顔には、疲れ、退屈、そして女王の狂気に対する同情が入り交じっています。立っている二人の廷臣と豪華な錦のドレスを着た女性が、フアナを待ちまた見守っています。右の背景にある修道院は、修道女が運営していることを知った女王が怒りをあらわにした場所。そして左側では、夜が真っ暗な空が近づいてきているのがわかります。
画家フランシスコの最高傑作
(画家 Francisco_Pradilla_Ortiz 自画像)
『彷徨う狂女フアナ』は画家フランシスコが29歳の時に描いたこの作品。これは彼の最高傑作と呼ばれ、彼の芸術家としての国際的名声をえるに直結したといわれています。
歴史的な絵画を主に描いてきた彼が、生涯夢中になっていた主題の最も優れた表現であり、19世紀の他の歴史絵画を凌駕しているといっても過言ではなく、1877年にスペイン・アカデミーで公に展示され、とても高い評価を受けました。
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まとめ
『彷徨う狂女フアナ』は、画家フランシスコが29歳の時に描いた最高傑作。フアナは実在の人物で、夫の死により正気を失い幽閉されたことで知られています。絵画では、彼女が夫の棺とともにスペインを練り歩く姿が生々しく描きとられているのでした。
(トルデシリャスに幽閉された狂女フアナとその娘カタリナ)
精神に支障をきたしたこの絵の主人公は、『狂女フアナ』と呼ばれ死ぬまで幽閉されてしましす。この肖像画の主人公フアナはハプスブルク家の世継ぎをうみ、その子供は領地を地球の裏までひろげ『スペイン黄金時代』を築くことになるのでした。
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